技術情報

ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎

Ⅳ章-2 ベースラインの異常

ベースラインに関わるトラブルは、カラム劣化や汚染によるものだけではなく、装置異常に関わるものまで様々なものがあります。主なベースライン異常(ドリフト、スパイク、ノイズ、不安定、うねり)に分類して示していますが、装置異常に関わる場合は、ご使用の装置の取扱説明書を確認してください。

ドリフト

主な原因
対処法
カラムのコンディショニングが不充分
手順(キャピラリーカラムの取扱方法を参照)に従い、カラムのコンディショニングを行う。
空気(水、酸素)の混入
過度なドリフト(液相剥離によるベースライン上昇)が生じる場合には、キャリアガスの確認を行う。
カラム(液相)の劣化
カラムの交換をする。
検出器の平衡化が不充分
検出器が安定するまで待つ。
検出器の汚染
検出器を洗浄する。

スパイク

主な原因
対処法
カラム接続(検出器側)が不充分
カラムを差し込みすぎた際に生じる場合がある。GC装置の取扱説明書で指定された位置になるように、カラムの挿入長さを確認する。
検出器の汚染
検出器を洗浄する。
シグナルケーブルの不良
接触不良、絶縁不良が無いことを確認する。場合によっては交換する。
電気ケーブル、電源供給の異常
安定した電源供給を検討する。

ノイズ

主な原因 
対処法
検出器の汚染
検出器を洗浄する。
カラム(液相)の汚染
カラムのコンディショニングを行う。カラムの注入口側を50cm程度切断する。改善しない場合は、カラムを交換する。
注入口の汚染
注入口セプタムのカスや試料残留物などによるライナー汚染が原因となり生じる場合がある。ライナーの洗浄もしくは交換をする。注入口セプタムの交換をする。
カラム接続(検出器側)の不適切
カラムを差し込みすぎた場合に生じる場合がある。GC装置の取扱説明書で指定された位置になるように、カラムの挿入長さを調整する。
キャリアガスの流量が不適切
GC装置の取扱説明書で指定された流量に設定する。
キャリアガスの漏れ(MS、TCD、ECDの場合)
空気の漏れ込みにより生じる場合がある。漏れ箇所の確認と改善を行う。
検出器の不良
フィラメント、エレクトロンマルチプライヤー、アンプ、基板などの不良。交換もしくは、修理を行う。
 

不安定、うねり

主な原因
対処法
カラムコンディショニングが不充分
手順(キャピラリーカラムの取扱方法を参照)に従い、カラムのコンディショニングを行う。
カラム(液相)の汚染
カラムのコンディショニングを行う。カラムの注入口側を50cm程度切断する。改善しない場合は、カラムを交換する。
注入口の汚染
注入口セプタムのカスや試料残留物などによるライナー汚染が原因となり生じる場合がある。ライナーの洗浄もしくは交換をする。注入口セプタムの交換をする。
検出器の汚染
検出器を洗浄する。
検出器温度が不安定
TCDで生じる場合がある。温度の安定性を確認する。
キャリアガスの流量が不安定、純度不足
流量やガス純度(汚染)を確認する。
装置周辺の温度環境が悪い
周囲の温度環境を確認する。

 

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