ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎
Ⅰ章-3 カラムの原理
Ⅰ章-3-1 分離のしくみ
ガスクロマトグラフィーにおける分離のしくみについて説明します。
試料注入部で気化した試料混合物は、キャリヤーガスによって運ばれ、カラム内に導入されます。
カラム中では、各試料成分とカラム中の固定相との相互作用(吸着、分配)により、移動速度に違いが生じます。これにより検出器までの到達時間に差が現れ、分離が達成されます。
試料導入部で気化した試料は、キャリアガスによって運ばれ、カラム内に入る。
カラム内では、試料とカラムの固定相の相互作用(吸着や分配)により、各成分の移動に違いが見られるために、分離される。
試料の沸点や、極性により、混合成分が分離される。
Ⅰ章-3-2 固定相による分類
固定相の種類により、気-固クロマトグラフィーと気-液クロマトグラフィーに分類されます。
気-固クロマトグラフィーは、試料と固定相(吸着剤)の吸着により分離されます。
吸着剤にはシリカゲル、活性炭、アルミナ、合成ゼオライトなどを使用し希ガスや低級炭化水素の分離に多く使用されています。主にパックドカラムの充填剤として使用します。
気-固クロマトグラフィーの分析例(無機ガス分析)
気-液クロマトグラフィーでは試料と固定相(液相)の分配により分離されます。
液相にはジメチルポリシロキサンやポリエチレングリコールなどが多く使用され有機化合物全般の分離に使用されます。
現在では、主にキャピラリーカラムに液相をコーティングして使用します。
気-液クロマトグラフィーの分析例(炭化水素分析)
Ⅰ章-3-3 カラムによる分類
GCのカラムには、パックドカラム(充填カラム)とキャピラリーカラムの2種類があります。
パックドカラムはステンレスやガラスなどの内径2~4mm程度の管の中に、珪藻土などの担体に液相を含浸、塗布した充填剤、または活性炭などの吸着剤を充填したものです。
キャピラリーカラムは、内径1mm以下のフューズドシリカや内面不活性処理ステンレスなどの中空細管の内面に、液相または吸着剤を塗布、もしくは化学結合したものです。
Ⅰ章-3-4 パックドカラムとキャピラリーカラムの比較
パックドカラムは分析の用途に合わせて様々な種類の液相があるのが特長で、ガス分析や公定法分析などに使われています。現在主流になっているのはキャピラリーカラムで、分離能力に優れ、不活性度が高く、高感度分析に向いているのが特長です。
パックドカラム | キャピラリーカラム | |
---|---|---|
内径(mm) | 0.5~6 ※ | 0.1 ~ 0.53 |
長さ(m) | 0.5~10 | 5~100 |
濃度,膜厚 | 1~30% | 0.1~5.0µm |
理論段数N | 2,000~100,000 | 7,500~300,000 |
理論段数(N) | 2,000 ~ 100,000 | 7,500 ~ 300,000 |
分離能(N/m) | 2,000 ~ 2,500 | 1,500 ~ 5,000 |
材質 | ガラス・ステンレス他 | フューズドシリカ・内面不活性処理ステンレス他 |
不活性度 | 低い | 高い |
サンプル負荷量(µg) | 10~20 | 0.05~3.0 |
※0.5~1mm程度のものは、充填キャピラリーカラム(マイクロパックドカラム)ともいう。
キャピラリーカラムでシャープなピークが得られる理由
パックドカラムにおいては、サンプルが様々な経路を経るため、ピークがブロードになります。
キャピラリーカラムには充填物がなく、サンプルは固定相間しか移動する流路がないため、シャープなピークを得ることができます。
このためピークの高さはパックドカラムより高くなり、高感度分析に有利となります。