技術情報

ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎

Ⅱ章-2 キャピラリーカラムの選択方法

キャピラリーカラムを選択する際のポイントについて説明します。

  • 液相の種類
  • カラムの長さ
  • カラムの内径
  • 液相の膜厚

キャピラリーカラムを選択する際のファクターとして、上記の4点があげられます。これらのファクターが、実際の分析に対してどのような影響を与えるかを順に説明します。

Ⅱ章-2-1 液相の種類

品名 液相 相当USPコード 極性 アプリケーション
InertCap 1MS 100%Dimethylpolysiloxane G2 一般分析、炭化水素、
高沸点成分、PCB、フェノール
InertCap 1 100%Dimethylpolysiloxane G2 一般分析、炭化水素、
高沸点成分、PCB、フェノール
InertCap 5MS/Sil 5% Diphenyl(equiv.)-
Dimethylpolysilphenylene siloxane
G27 一般分析、ハロゲン化合物、フェノール、農薬、FAME
InertCap 5MS/NP 5% Diphenyl
95%Dimethylpolysiloxane
G27 一般分析、ハロゲン化合物、フェノール、農薬、FAME
InertCap 5 5% Diphenyl
95%Dimethylpolysiloxane
G27 一般分析、ハロゲン化合物、フェノール、農薬、FAME
InertCap Pesticides 5% Diphenyl(equiv.)
Dimethylpolysilphenylene siloxane
G27 農薬多成分一斉スクリーニング
InertCap 624 6%Cyanopropylphenyl
94%Dimethylpolysiloxane
G43 VOC、アルコール
InertCap 1301 6%Cyanopropylphenyl
94%Dimethylpolysiloxane
G43 農薬、PCB、アルコール、VOC
InertCap 25 25% Diphenyl
75%Dimethylpolysiloxane
G28 農薬、PCB、アルコール、VOC
InertCap 35 35% Diphenyl
65%Dimethylpolysiloxane
G42 農薬、アミン、医薬品、PCB
InertCap 1701 14%Cyanopropylphenyl
86%Dimethylpolysiloxane
G46 糖類、TMS誘導体、薬物、アルコール、ステロイド
InertCap 17MS 50% Diphenyl
50%Dimethylpolysiloxane
G3 ステロイド、薬物、農薬
InertCap 17 50% Diphenyl
50%Dimethylpolysiloxane
G3 ステロイド、薬物、農薬
InertCap 210 50%Trifluoropropyl
50%Methylpolysiloxane
G6 有機リン系農薬
InertCap 225 50%Cyanopropylmethyl
50%Phenylmethylpolysiloxane
G19 中~高 FAME
InertCap Pure-WAX Polyethylene Glycol G16 一般分析、エステル、香料、アルコール、芳香族、FAME
InertCap WAX Polyethylene Glycol G16 一般分析、エステル、香料、アルコール、芳香族、FAME
InertCap WAX-HT Polyethylene Glycol G16 一般分析、エステル、香料、アルコール、芳香族、FAME
InertCap FFAP Nitroterephthalic acid modified
Polyethylene Glycol
G35 FAME、遊離脂肪酸、有機酸、アルコール、アルデヒド

上記のカラム(液相)で分析できない場合や、分析条件をより最適化したい場合は、専用カラムを使用してください。

専用カラム

品名 液相 相当USPコード 極性 アプリケーション
InertCap for Amines 特殊液相 アミン化合物、アルコール
InertCap CHIRAMIX 特殊液相 光学異性体
InertCap AQUATIC 25% Diphenyl
75%Methylpolysiloxane
G28 VOC、有機溶剤
InertCap AQUATIC-2 25% Diphenyl
75%Methylpolysiloxanee
G28 VOC、有機溶剤

一般分析用の液相は、構造的にみて、シリコン系液相とWAX系液相に分けることができます。シリコン系液相の特長は、Si-O-Siの基本骨格の側鎖にメチル基、フェニル基、シアノプロピル基などが付いていることです。側鎖にすべてメチル基が付いているものが無極性液相と呼ばれるもので、シリコン系液相の中で最も極性の弱いものです。このメチル基がフェニル基やシアノプロピル基に置き換わることによって、液相は極性をもち、その割合が増えるに従って、液相の極性は強くなっていきます。
また、WAX系液相は、極性が高く、基本骨格はエチレングリコールの重合体です。ポリエチレングリコールとニトロテレフタル酸エステルの重合体であるFFAPは、さらに極性が高く、遊離脂肪酸や脂肪酸エステルの分析に使用されます。

シリコン系液相の構造式

WAX系液相の構造式

カラム液相の選択は、まず、分析対象成分とカラム液相の極性を合わせることから始めます。たとえば、アルコールや脂肪酸のような極性物質を測定する場合は、WAX系やさらに高極性のFFAPのカラムを選択します。測定物質とカラムの極性が違う場合、液相に対する溶解力が低くなり、ピーク形状が悪くなることがあります。また、液相の試料許容量が少なくなるため、サンプル負荷量を増やすことができません。下記に、脂肪酸を無極性カラムと高極性カラムで測定した例を示します。無極性カラムでは低級脂肪酸のピーク形状が悪くなりますが、高極性カラムでは改善されていることがわかります。高極性カラムは、液相となじみが良く液相に溶け込んでいる時間が長くなるため、保持が強くなり、溶出時間が遅くなります。

液相の違いによるクロマトグラムの比較

Ⅱ章-2-2 カラム長さ

カラムの長さは、理論段数と分析時間に影響します。キャピラリーカラムには長さ5m~100mの種類があり、一般的には30m~60mのカラムが多く使われます。長さが2倍になれば理論段数と分析時間が2倍になります。ただし分離度は約1.4倍しか向上しないため、思うほど分離が改善しないことがあります。分離を目的とする場合は長いカラムを、分析時間を短縮したい場合は、短いカラムの使用をお薦めします。分離が可能な範囲で、なるべく短いカラムを選択して下さい。

分離度の展開

R:分離度
N:理論段数
α:分離係数
k:保持係数

Ⅱ章-2-3 カラムの内径

カラムの内径は、理論段数、分離度、試料負荷量に影響します。一般的には0.25~0.53mmを使用します。内径の細いカラムの方が単位長さあたりの理論段数が高いため、分離を重視する場合は、内径の細いカラムを使用します。ただし、内径の細いカラムは試料負荷量が少なくなるため、スプリット比を大きくするなど、導入量の調整が必要であり、微量分析では不充分な場合があります。微量分析においては、内径の太い0.53mmのカラムを使い、スプリット比を小さくすることで改善される可能性があります。また、0.1mm~0.18mmの内径の細いカラムは高分離能であるため、線速度を速くすることができ、高速分析に適しています。

Ⅱ章-2-4 液相の膜厚

液相の膜厚は、分析時間と試料負荷量に影響します。膜厚を厚くすることにより、試料負荷量が大きくなり、より高濃度の試料を測定できます。下図のクロマトグラムは、分離が改善された一例です。膜厚1.5µmの場合、プロピレンとプロパン以外の成分はほとんど分離しています。しかし、膜厚を厚くすることで各試料の保持比は膜厚にほぼ比例して増加し、分析時間は長くなりピークの幅は広くなっています。沸点の高い物質の分離を改善する場合、膜厚を厚くしても、分析時間が長くなるばかりか、ピーク幅が太くなってしまうために分離は改善されません。また、膜厚を厚くすると、昇温分析時のベースラインのドリフトが大きくなります。

膜厚の違いによるクロマトグラム比較

昇温時のベースライン変動

Ⅱ章-2-5 まとめ

ここまで、キャピラリーカラム選択のための4つのファクター(液相、長さ、内径、膜厚)について、分析にどのような影響を与えるか述べました。さらに具体的な選択方法として、以下にまとめましたので参考にしてください。

最初に、過去の分析例を探します。目的と同じ分析例が見つかれば、そこに記載されている分析条件で、同様のクロマトグラムが得られるはずです。分析例が見つからない場合には、4つのファクターを考慮に入れてカラムを選択します。液相の種類を決める場合には、目的成分に化学的性質の近いものを選ぶわけですが、具体的には、InertCap 1とInertCap WAXのどちらが適しているかという程度の選択で多くの場合は大丈夫です。長さは、分析可能な範囲でなるべく短いものを選びますが、30m程度のものをお薦めします。内径は、分離を重視する場合0.25mm、試料を大量に注入する場合0.53mmをお薦めします。膜厚は、分析可能な範囲でなるべく薄いものを選びますが、0.25µm程度が標準です。