技術情報

ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎

Ⅱ章-3 分析に影響するその他のファクター

次に、分析に影響を与えるファクターとしてカラム以外の「キャリヤーガスの種類」「キャリヤーガスの流速」「カラムの温度」について説明します。

Ⅱ章-3-1 キャリヤーガスの種類

キャピラリーカラムで使用されるキャリヤーガスとしては、窒素、水素、ヘリウムなどが挙げられます。特徴は以下の通りとなります。

窒素:安価で安全だが、最適線速度が遅いため分析時間がかかり、最適流速域も狭い。

水素:安価で最適流速域が広く、性能としては理想的だが、安全性の面で問題が残る。

ヘリウム:高価だが最適流速域が広く、安定性が高い

HETPとは理論段相当高さのことで、理論段1段に相当するカラム長さをmm単位で表したものです。
HETPが小さいほど分離能力が高い

Ⅱ章-3-2 キャリヤーガスの流速

キャピラリーカラムの分析においてキャリヤーガスの流速は重要です。
流速が速ければ速いほど分析時間は短くなりますが、良い分離を得るためには、最適流速で分析する必要があります。キャリヤーガスの種類、カラムの内径、カラムの長さによって最適流速は異なります。

下図は、キャリヤーガスにヘリウムを使用したときのカラムの内径の違いによる最適流速域の変化、および長さの違いによる最適流速域の変化を表しています。内径の小さいものほど広い範囲に渡って低いHETPが得られているのが分かります。
また、カラムの長さが短いほど広い最適流速域を持っていることが分かります。

内径の違いによるHETP曲線の変化と長さの違いによるHETP曲線の変化の画像

Ⅱ章-3-3 カラムの温度

カラム温度を高くすることにより、保持比は小さくなり、分析時間が短くなります。
カラム温度の設定には、等温法と昇温法があります。

等温法

等温法とは、カラムを一定温度に保ちながら行う分析法で、恒温分析とも呼ばれます。比較的成分数が少ない場合に用います。一定温度で分析するので、前の分析終了後、すぐに次の試料を導入することができます。またベースラインのブリードによる上昇もありません。

等温法の画像

しかし、低沸点成分から高沸点成分までを分析する場合、それぞれの成分が溶出する温度に大きな差があるために一斉分析が困難となります。
一般的には、試料中の成分の沸点差が少ない場合に使用されます。

昇温法

昇温法とは、低温から高温まで上昇させながら行う分析法で、昇温分析とも呼ばれます。
低沸点成分から高沸点までの幅広い成分を短時間、良好なピーク形状で分析することが可能です。

昇温法の画像

昇温法では、同族列の化合物の溶出順序は変わりませんが、多成分混合試料では溶出順序が変わることがありますので注意が必要です。

 

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