技術情報

ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎

Ⅱ章-4 キャピラリーカラムの取扱方法

Ⅱ章-4-1 カラムの取り付け

●GCの注入口および検出器へ接続するために、必要な長さのカラムをホルダーから外します。

●注入口の取付ナットおよびフェラルをカラム注入口の先端に通します。事前に不要になった注入口セプタムなどを取り付けておくと、カラムナットが動かず、取り付けの際に便利です。
カラム先端をセラミックチューブカッターなどの専用カッターで2cm切断します。
この時、切断面が垂直になるように注意してください。特に、カラム入口側のカラム切断面の状態は、分析結果に与える影響が大きいため、切断後はルーペで確認することをお薦めします。
簡単きれいにカラムを切断したい場合は、キャピラリーファインカッターをご検討ください。

 
●注入口へ挿入するカラム先端の長さは、お手持ちのGC装置取扱説明書をご確認ください。
カラムの入口側と出口側は、指示がある場合を除き特に決められていません。
より安定した分析結果を得るためには、あらかじめ入口側、出口側を決めておくことをお薦めします。

キャピラリーカラム接続方法は動画を公開しています。下記をご参照ください。

 
●キャリヤーガスの圧力(流量)を設定し、ガスが流れていること、漏れのないことを確認します。
カラムへの線速度を約30cm/secに設定するか、下記の表を参考にしてカラムのヘッド圧(注入口内圧力)を設定します。
ヘッド圧はGC種類、キャリヤーガスの種類などによって異なりますので注意してください。

カラムサイズとヘッド圧の関係

長さ\内径 0.18mmI.D 0.25mmI.D. 0.32mmI.D. 0.53mmI.D.
20m 約150kPa
30m 約100kPa 約70kPa 約20kPa
60m 約200kPa 約140kPa 約50kPa

注)キャリヤーガスHe, オーブン初期温度40℃の場合。

リークディテクターLD239 Cat.No.2702-19330の画像

リークディテクターLD239 Cat.No.2702-19330

ヘリウムガス漏れの確認には、リークディテクターLD239(Cat.No.2702-19330)の使用をお薦めします。

・機械で漏れを検出
・コンタミネーションのリスクがない
・高感度、高安定性
・雰囲気空気と熱伝導差が大きいガス種のみ検出可能(He,H2など)

 

Ⅱ章-4-2 カラムのコンディショニング

コンディショニングとは

キャピラリーカラムのコンディショニングとは、固定相(液相)に溶解している不純物や、吸着した成分を除去するために、キャリヤーガスを流しながらキャピラリーカラムの温度を適切な温度に上げて焼き出し(エージング)することを言います。
当社のキャピラリーカラムはコンディショニング後に出荷されますが、カラムの性能を十分に発揮させ、再現性の良い分析結果を得るために、分析前にコンディショニングを行なうことをお薦めします。

GC装置を使用している画像

カラムブリードとは

カラムブリードは、カラム固定相から溶出する成分によるバックグラウンド信号です。カラム温度が高くなると、溶出量が多くなる傾向があります。
カラムでも無極性や微極性で膜圧の薄いカラムはカラムブリードが低いですが、極性カラムや膜厚の厚いカラム(1.6µm以上)のカラムでは新品でもカラムブリードが大きいのでコンディショニングにおいて注意をする必要があります。
また、新品にくらべてブリードが異常に大きくなっている場合は固定相の分解が起きている可能性があります。

コンディショニング時の注意点

・キャリヤーガスが流れていることを確認してください。キャリヤーガス内に水分や酸素が存在する状態でカラムを加熱するとカラムの劣化に繋がります。必要に応じてガス精製管(水分、酸素、有機物除去用)を使用してください。

・検出器の汚染を防ぐために、カラムの検出器側のみを外してコンディショニングすることが理想です。検出器に接続したままコンディショニングする場合は、汚れの付着を防ぐために検出器の温度をカラムの最終温度より20℃高く設定して、検出器の汚染に注意しながらコンディショニングを行なってください。

・キャリヤーガスを流した状態で30mカラムの場合、室温下で20分以上パージします。パージが不充分な状態で昇温すると、性能低下の原因となるため、注意してください。

・室温から5~10℃/minの速度で昇温し、分析で使用する最高温度より10℃高い温度(ただし、カラム最高使用温度(Iso.Max.Temp.)を越える場合は、カラム最高使用温度(Iso.Max.Temp.))で、1~2時間程度コンディショニングしてください。

カラムを検出器と接続してコンディショニングする場合の手順

-シリコン系液相の場合(InertCap 1、InertCap 5など)-
室温でキャリヤーガスを20分以上流します。
40℃から10℃/minでコンディショニング最高温度まで上げ、1時間ホールドします。ベースラインが安定していれば終了。安定していなければ、もう1時間コンディショニングを継続して改善しない場合は、コンディショニングを中止します。
GCシステムのリークや汚染、カラムの劣化などが疑われます。

-WAX系液相の場合(InertCap Pure-WAXなど)-
室温でキャリヤーガスを20分以上流します。40℃から5℃/minで100℃まで上げ、30分間ホールド(水分の追い出し)した後、5℃/minでコンディショニング最高温度まで上げ、1時間ホールドします。
ベースラインが安定していれば終了。安定していなければ、もう1時間コンディショニングを継続して改善しない場合は、コンディショニングを中止します。
GCシステムのリークや汚染、カラムの劣化などが疑われます。

※カラムの検出器側を外してコンディショニングする場合の手順は、「Ⅱ章-5 キャピラリーカラムの使用上の注意」をご参照ください。


Ⅱ章-4-3 カラムの保管

カラム保管時の注意点

キャリヤーガスで充分にカラムをパージした後に、カラム保管時の不純物の混入を防ぐため、キャップなどでカラム両端をシールします。
セプタムで代用した場合、酸素が透過してしまうため、フューズドシリカエンドキャップの方がお薦めです。
カラムは、梱包箱に入れて、直射日光の当たらない場所で保管してください。

フューズドシリカ エンドキャップ (0.15mm~0.53mm用)

フューズドシリカ エンドキャップ (0.15mm~0.53mm用)

カラムの劣化判定

分析の精度を維持するために、定期的にカラム性能を確認することをお薦めします。
当社では出荷検査試料を販売しておりますので、工場出荷時の分離状態と比較し、パフォーマンスを確認することができます。

また、使い始めにカラムブリード量を測定することをお薦めします。
定期的にカラムブリード量を確認することで、カラムの劣化状態を判断することができます。(液相が熱や酸化などで劣化した場合、カラムブリード量は増加してベースラインが上昇します。)

参考
カラムブリード量測定の温度条件
:40℃(1min hold)-10℃/min-各カラムの最高使用温度(Iso.Max.Temp.)(10min hold)

分析事例やノウハウを多数ご用意しています