技術情報

HPLCの上手な使い方

Ⅰ章-4 カラムを長持ちさせるために

充填カラムの保守・保管を怠っていると、気付かないうちにカラムが劣化している場合があります。取扱説明書に準じた保守・保管を行えば、かなり充填カラムの劣化を抑制することができるはずです。ここではカラムを少しでも長く使用していただくために(メーカーとしては少しでも早く新しいカラムに買い換えて欲しいのですが)、逆相系シリカゲル充填カラムの保守・保管について説明します。

振動・圧力変動

充填カラムは、振動や圧力変動によって充填状態が変わり、高理論段数が得られなくなってしまいますので充分注意してください。特にカラムの取り外しは、ポンプ圧力が”0”になったのを確認してから行ってください。

フィルターの目詰まり

分析圧力の増大、ピーク割れの原因として最も多いのはフィルターの目詰まりです。このような現象が生じた場合には、フィルターを交換してください。また、頻繁に起こるようですと試料の汚れや析出が考えられます。試料を分析溶離液に溶解または希釈させ、クロマトディスクなどで濾過をしてから注入すればこのような現象をかなり押さえることができます。

分析終了後の洗浄

カラム内に緩衡塩・イオン対試薬・酸などが残っていると加水分解を促進しますので、分析終了後は必ず洗浄してください。洗浄溶離液としては、緩衡塩・イオン対試薬・酸などを含まない同一組成の溶離液が最適です。水100%での洗浄は、イオン対試薬の種類によっては析出が考えられますので充分注意してください。洗浄はカラム内容積の5倍量を目安にして、圧力に注意しながら行ってください。例えば内径4.6mmのカラムでは、流速1mL/minで20分程度洗浄すれば充分です。

蓄積脂溶性成分の除去

水の割合が多い溶離液を長期間使用していると、マトリクスなどに含まれる脂溶性の高い成分がカラム内に蓄積されて充填剤が汚れてしまい、理論段数の低下やピーク割れの原因となります。この脂溶性成分を除去するためには、有機溶媒組成の高い溶離液で週に1回程度洗浄してください。洗浄しても改善されない場合、入口側の汚れた充填剤をかき取り、新しい充填剤を補充することも一つの手法ですが、かなりの熟練と手間を要します。したがって、ガードカラムなどの使用によって、試料の汚れが分析カラムに入らないようにすることをお薦めします。

長期保管の方法

緩衡塩・イオン対試薬・酸などを充分洗い流した後、有機溶媒100%に置換してカラム栓で密栓し温度変化の少ない場所に保管してください。なお、置換の際ジクロロメタンなどの塩素系溶媒は腐食性があるので避けてください。置換用有機溶媒としてはメタノールをお薦めします。また、置換した溶媒を明記しておきますと次に使用するときに便利です。