加熱脱離チューブの選び方
Ⅳ章-10 Soil Gas
概要

土壌ガス/蒸気侵入(Soil Gas/Vapor Intrusion)とは、土壌中の空隙に存在する VOC/SVOC が、住宅・商業施設を問わず建物内へ侵入する現象を指します。土壌ガス暴露の測定は、人の健康への潜在的影響を評価するために重要です。
土壌ガスや蒸気は、汚染された土壌や地下水中の化学物質に由来し、基礎部分の亀裂、地下室の床や壁のひび割れ、床下空間、配管・ユーティリティライン周辺の隙間などを通って建物内へ移動します。
Camsco では、汎用用途向けの土壌蒸気侵入対策チューブ(Application Note #12344 参照)に加え、ガソリン、ディーゼル、その他石油製品による特定汚染評価向けに Soil Gas Tube(品番:SU60525) も提供しています。
上の写真は、2008年にニューオーリンズ南部の地表で、水面上に油分が浮いた様子を示しています。このような石油流出が発生した場合、ガソリン由来のプロパンやブタンなどの軽質 VVOC は、通常の大気条件下ですぐに揮発し、長期的な汚染要因にはなりにくいとされています。Tenax TA と Carbograph™ 5 の組み合わせは、一部の VVOC を対象外とするものの、VOC および SVOC の捕集に非常に適しています。
土壌ガス(Soil Gas) チューブ構成
・Tenax® TA + Carbograph 5
・吸着剤は 3 mm のガラスウールプラグによって区分されています。
・Carbograph 5 は Carbopack™ X と同等品です。
C3〜C26 の揮発性有機化合物に対応

・室内空気質評価では、C3 ~ C26 を対象として 1 ~ 10 L の空気量を採取可能です。
・加熱した土壌サンプルを用いるマイクロチャンバーでは、採取空気量は 1 L 未満となることが多くあります
適用温度
・最高使用温度 :350℃
・コンディショニング温度:320℃
・加熱脱離温度 :300℃
利点
・ガソリンからディーゼル成分まで幅広く対応し、石油関連の土壌汚染に適しています。
・全ての吸着剤は高い疎水性を持ち、含湿土壌ガスの捕集にも適しています。
欠点
・Tenax TA がチューブの脱離温度上限およびバックグラウンドノイズを制限する要因となります。
テクニカルガイド
名称が示すとおり、Soil Gas Tube は石油由来化合物によって汚染された土壌ガスを対象とした、アクティブ/ポンプ式サンプリング向けのデュアルベッドチューブです。
Soil Gas Tube は標準でステンレス製チューブを採用していますが、多くのユーザーは不活性コーティング処理されたステンレスチューブを好みます。
吸着剤構成は一見異なりますが、本チューブは SVI Tube を改良した仕様であり、Tenax TA によってディーゼルレンジの有機化合物をカバーしつつ、Carbograph™ 5 によって BTEX や 1,3-ブタジエンなどの石油指標成分に重点を置いています。
本チューブは、リスク評価だけでなく、汚染源推定にも有用な TPH(Total Petroleum Hydrocarbon)プロファイルの取得に使用されることが多くあります。
土壌ガスには高い湿度が含まれる場合が多いため、サンプリング導入前には必ず ドライパージ処理を行うことが推奨されます。
他のチューブとの比較
SVI Tube と比較すると、Soil Gas Tube は Tenax® TA を使用しているためバックグラウンドが高くなりますが、揮発レンジの上限を C26 まで拡張できるため、DRO(ディーゼルレンジ有機物:C10〜C26)の分析では大きな利点があります。
単層構成の Tenax TA チューブ(Camsco 品番:SU60520-60)と比較すると、Soil Gas Tube は BTEX や 1,3-ブタジエンをブレークスルーなく確実に捕集できる点で優れています。
単層構成の Carbograph 5TD チューブ(BTEX Tube、Camsco 品番:SU60524)と比較すると、Soil Gas Tube は重質 DRO 範囲まで対応可能であり、さらに Tenax TA 層が汚染防止の役割を果たすことでコンタミネーションリスクも低減します。ただし、脱離温度は Tenax TA により制限されます。
図1および図2は、Soil Gas Tube がガソリンおよびディーゼルで汚染された砂試料の両方を分析できることを示しています。

図1
上段: 30°C および 50°C で乾燥砂から採取したガソリン蒸気
(Soil Gas Tube 使用)。
中段: 30°C および 50°C で湿潤砂から採取したガソリン蒸気
(Soil Gas Tube 使用)。
下段: チューブを繰り返し脱離した際のガソリン蒸気の分析結果
(キャリーオーバーが極めて小さいことを示す)。
図1および図2(P. Hughes, J. Dwan, D. Miserからの提供)

図2
上段: 30°C および 50°C で乾燥砂から採取したディーゼル蒸気
(Soil Gas Tube 使用)。
中段: 30°C および 50°C で湿潤砂から採取したディーゼル蒸気
(Soil Gas Tube 使用)。
下段: チューブを繰り返し脱離した際のディーゼル蒸気の分析結果
(キャリーオーバーが極めて小さいことを示す)。
参考文献
US EPA Method TO-17: Determination of volatile organic compounds in ambient air using active sampling onto sorbent tubes. EPA/625/R-96/010b, 1999
US EPA Methods TO-1 and TO-2, Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air. EPA 600/4-84-041, 1984
Piccot, S., J. Watson, AND J. Jones*. A Global Inventory of Volatile Organic Compound Emissions from Anthropogenic Sources. Journal of Geophysical Research 97(D9):9897-9912, (1992)
E. Hunter Daughtrey, K. D. Oliver, J. R. Adams, K. G. Kronmiller, W. A. Lonneman, W. A. McClenny, A comparison of sampling and analysis methods for low-ppbC levels of volatile organic compounds in ambient air, J. Environ. Monit., 2001, 3, 166-174
UK Health and Safety Executive MDHS 72 (Volatile Organic Compounds in Air), "Laboratory Method Using Pumped Solid Sorbent Tubes, Thermal Desorption and Gas Chromatography," Methods for the Determination of Hazardous Substances (MDHS), Sheffield, UK.
Ciccioli, P., Brancaleoni, E., Cecinato, A., DiPalo, C., Brachetti, A., and Liberti, A., "GC Evaluation of the Organic Components Present in the Atmosphere at Trace Levels with the Aid of Carbopack™ B for Preconcentration of the Sample," J.of Chrom., 351, pp 433-449, 1986.



























