加熱脱離チューブの選び方
Ⅰ章-4 ドライパージについて
4-1.ドライパージが必要な理由
Tenax、Carbopack、Carbotrap はいずれも高い疎水性をもち、高湿度下でのサンプリングでも水分をほとんど保持しません。一方、カーボンモレキュラーシーブ(CMS)や一部の炭素系吸着剤は、非常に微細な細孔を持ち、水分を強く吸着する性質があります。そのため、湿度の高い環境でサンプリングを行うと吸着剤内部に水が滞留し、以下のような問題を引き起こします。
・水分によりピーク形状の悪化や保持時間の変動が生じることがある。
・2次トラップで水が凍結し、スプリット流量比が変動することがある。
・水分によって質量分析計の真空度が低下し、感度や測定の安定性が損なわれる場合がある。
これらの問題を防ぐためには、分析前に乾燥ガスを流して吸着剤内部の水分を除去する「ドライパージ」を実施します。これにより、常温でも効率的に水分を取り除くことができます。
4-2. ドライパージ(DRY Purge)とは?
ドライパージとは、サンプリング後の捕集管を 目的成分が脱着しない比較的低い温度に保ちつつ、乾燥した不活性ガス(N₂ または He)を一定時間流して、吸着剤に保持された水分を事前に除去する操作です。
使用するガス
高純度窒素(N₂)
ヘリウム(He)※エアーなど湿度を含むガスは使用不可
使用する装置
加熱脱離装置に「ドライパージ機能」が搭載されている場合がありますが、装置側のドライパージだけではチューブ内部の水分を完全に除去できないことがあります。
そのため、検量線作成ツールなどを用いて、手動でドライパージを行うことを推奨します。
ドライパージの方法
乾燥ガスを 約 50 mL/min でチューブに流し、水分を追い出します。ただし、流量やパージ量が多すぎると、
目的化合物が吸着剤から押し出される(ブレークスルー)可能性があり、測定結果に影響を及ぼすため注意が必要です。
推奨ドライパージ量(目安)
・Tenax およびグラファイトカーボン系吸着剤
→ドライパージ不要、または 0.2~0.5 L(数分の軽パージ)
・カーボンモレキュラーシーブ(CMS)系吸着剤
→絶対湿度に応じて 0.5~3 L 程度のパージが必要
ドライパージ終了の判断方法(CMS に有効)
CMS など吸湿性の高い吸着剤では、吸着管の重量変化でドライパージの要否と終了を判断できます。
【手順】
1.サンプリング前に吸着管を秤量し、空重量(テア重量)を記録する。
2.サンプリング後に再度秤量し、重量差が 1 mg を超える場合はドライパージが必要。
3.清浄な N₂ または He を 約 50 mL/min で流し、パージする。
4.0.5 L のガスが通過したら吸着管を取り外して再度秤量する。
5.サンプリング前のテア重量との差が ±1 mg 以内になるまで、0.5 L ごとにパージ → 秤量を繰り返す。
加熱脱離装置でスプリット注入を行っている場合、1 mg(≒1 μL)未満の水分であれば問題なく処理可能です。



























