技術情報

分取の上手な使い方

Ⅲ章-4 温度管理について

分取HPLCでは大量の溶媒を使用するため溶媒温度を均一にするのがポイントです。温度管理をすることによって、保持時間の再現性のよい分取が行え効率よく処理につながります。分取HPLCでは室温で分析する場合も多いですが、室温で分析する上でも温度管理は重要です。

移動相の温度について

移動相とカラムの温度は同じに

内径4.6mmなどの分析カラムを使用する場合は移動相の温度に注意する必要はありません。しかし、分取カラムの場合、カラム内径が太いためにエアーオーブンではカラムの中心部まで温めることができず、下図のようにカラムの外周部と中心部でサンプル移動速度が違ってしまいます。その結果、ショルダーピークになったり、さらにひどい場合には1本であるべきピークが2本に割れてしまうという現象が起こります。そのため、分取HPLCでは移動相の温度がカラムの温度と同程度になるようにする必要があります。特に、季節による温度変化や溶媒混合による発熱・吸熱反応に注意してください。

移動相の温度をカラム温度と同程度にするには、プレヒートミキサーを使用すると効率的です。プレヒートミキサーにはグラジエント時のミキシング効果と移動相の温度をカラム温度と均一にする温調効果があります。下図にプレヒートミキサーの有無によるクロマトグラムの比較を示しました。プレヒートミキサーがない場合に比べ、プレヒートミキサーがある場合のピークがシャープであるのが分かるかと思います。プレヒートミキサーを使用するのは温調している場合はもちろんですが、室温で分取をする場合も、移動相温度と室温には差があるため使用することをお薦めします。

測定条件

Column
:
Inertsil ODS-3
(5µm, 250×20mm I.D.)
Eluent
:
A) MeOH
B) water
A/B = 75/25, v/v
Flow Rate
:
15mL/min
Col.Temp.
:
35ºC
Detection
:
UV254 nm
Inj. vol.
:
1mL
Sample
:
フタル酸ジメチル
フタル酸ジエチル
フタル酸ジアリル

溶媒温度の影響

移動相の温度には注意

下図は、室温を一定にし、移動相の温度が異なる条件で分析したときのクロマトグラムです。夏に比べ冬のほうが分離が悪いことがわかります。
実験室の温度は管理されているため一年を通してそれほど大きな変化がないかもしれませんが、溶媒の温度は保管場所によって大きな変化があります。溶媒倉庫が室外にあったりと、冬場は特に室温と溶媒温度の差が大きくなります。分取HPLCで使用する溶媒は溶媒倉庫より移動してすぐ使用するのではなく、室温下で1日程度置いてから使用するのがポイントになります。また、プレヒート容量を増やすのもピーク形状を改善させるポイントになります。