分取の上手な使い方
Ⅲ章-3 スケールアップについて
スケールアップの考え方
最適な分取HPLC条件を探し出すのは容易なことではありません。しかし、分取HPLCにおいて条件検討時に消費する溶媒量は相当な量になり、さらに、貴重なサンプルも大量に無駄にしてしまう可能性があります。そのため、分取HPLCの条件検討は、初めに分析カラムで検討するのが一般的です。分取カラムと同じゲルを充填した内径の小さいカラムで条件を検討することで、溶媒やサンプルの消費を最小限に抑えて分取条件を決定することが可能になります。今回は、Inertsil ODS-3を例に取り、内径4.6mmの分析カラムから内径の大きい分取カラムへ移行する手順についてご紹介します。
- スケールアップ時の流量は断面積に比例
- スケールアップ時の負荷量(注入量)も断面積に比例
<例>
内径4.6mmの分析カラムから内径20mmの分取カラムへスケールアップする場合断面積は約18.9倍になるので、流量と負荷量(注入量)を18.9倍にすればスケールアップできます。
この際、サンプル濃度は一定とします。
スケールアップ時の流量
スケールアップ時の流量は断面積に比例
下図は10µm粒子径のカラム内径が異なる3本のカラムの線速度とHETPの関係になります。HETPは小さいほど分離のよいピークが得られます。
上図から10µm粒子径カラムでは、カラム内径によらず最適線速度は3.0cm/min(0.5mm/sec)となります。よって、10µm粒子径カラムの場合は、カラム内径によらずスケールアップしたときは線速度が3.0cm/min(0.5mm/sec)になるように流量を設定すればよいことになります。なお、最適線速度は粒子径によって変わります。
次式より線速度が同じ場合の流量は、断面積に比例します。つまり、断面積に比例させて流量をアップさせればスケールアップができます。
流量(µL/min) = 断面積(mm2) × 線速度(mm/min)
スケールアップ時の流量
下図は内径の違う3本のカラムの試料負荷量に対する理論段数の関係を示したものです。
ここで、例えば理論段数2,000段のところを見てみると、そのときの試料負荷量は次の通りです。
スケールアップ時の負荷量(注入量)も断面積に比例
内径6mm 約1mg
内径20mm 約10mg
内径50mm 約120mg