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HPLCのまめ知識

溶離液に使う有機溶媒の選択

逆相モードの場合

逆相モードの場合、溶媒種を変更すると多くの場合保持時間が変わってしまいます。これは、溶媒種によって目的化合物に対する溶出力が異なるために起こる現象です。
そこでほぼ同じ保持時間に溶出させたい場合には、溶離液の溶媒組成を変更する必要があります。
溶媒種を変更した時は、化合物の種類によってはピークの溶出順序が変化する場合もあるので、再度定性を行うことをお薦めします。
また、溶媒種を変更することにより、これまで重なっていた化合物が分離するようになる場合もあります。(「HPLCカラムの上手な使い方 前編」の図2-3も参照してください)

図1 逆相モードでの分析例

HILICモードの場合

HILICモードの溶離液に使われる有機溶媒には、アセトニトリルがとても多く使用されています。
HILICモードで溶離液のアセトニトリルをメタノールに変更すると、保持が弱くなりすぎて実用的でないことがほとんどです。
HILICモードにおいてアセトニトリルに代わる有機溶媒としてはアセトンとTHFが挙げられます。
ただし、アセトンはアセトニトリルと比べるとUV吸収が非常に強い溶媒ですので、UV検出器を使用する分析には適しません。
THFは、HPLCの配管チューブ等によく使用されるPEEK樹脂を浸食することがありますので、接液部にPEEK製の部品が使われていない装置で使用するようにしてください。

図2 HILICモードにおける溶媒組成に対する保持変化

順相モードの場合

ヘキサンとエタノールを組み合わせて使用するのが一般的です。
ただし、目的成分の保持が弱い場合などは、エタノールで保持時間を調節しようとするとエタノールの濃度をかなり低くしなければならないことがあります。
このような場合には、エタノールよりも極性の低い2-プロパノールや酢酸エチルなどが代わりに使用されます。
これらの溶媒は、一般的にエタノールよりも順相モードにおける溶出力が弱いので、エタノールを使用した場合と比べて溶離液中の濃度が高くなります。その結果、調製がしやすくなり再現性に優れた溶離液条件とすることができます。

図3 主な溶媒の溶出力について

 

順相系溶媒 ➡ 逆相系溶媒の置換方法

InertSustain、Inertsilシリーズの順相カラムの出荷時は、表1に示すように非水系の溶離液が封入されています。
これらのカラムを逆相系(水系)溶離液で使用する場合、図1に記載された手順に従って、溶離液を置換してください。
特に塩を含む溶離液を使用する場合は、カラムの劣化防止のため、塩が析出しないように注意してください。
中間溶媒としては、イソプロピルアルコール(IPA)やエタノールが一般的ですが、アルコール系溶媒は送液時の圧力が高くなるため、カラムの上限圧力に注意して流量を調整してください。

表1 順相カラム封入溶媒例
図1 溶離液の置換方法
図2 置換方法の違いによる安定性の違い