技術情報

シリンジの選び方

1. マイクロシリンジとガスタイトシリンジの違い

マイクロシリンジは、ガラスとの結合や沈殿を起こさない均質な液体サンプルの分注に最適です。手作業で精密調整されたステンレス製プランジャーにより、スムーズで摩擦の少ない動作と最小限の摩耗を実現し、長期にわたり安定した性能を維持します。析出・結晶化、ガラスへの吸着が起こりにくい有機溶媒系サンプルに適しています。

ガスタイトシリンジガスタイトシリンジは、ガスおよび不均質な液体の分注用に設計されています。精密加工されたPTFE製プランジャーチップが高い気密性を確保し、漏れのない安定した操作を実現します。プランジャーチップはシリンジ内面を拭き取るように動作してサンプル残留を防止し、塩類・タンパク質・DNAなどを含む溶液でも長寿命かつ安定した性能を発揮します。

2. 品番(パーツナンバー)からシリンジを探す

STEP1:タイプ / シリーズ

シリンジ本体に印字されたシルク印刷には、シリンジタイプおよびシリンジモデル番号が記載されています。下の表を使用して対応するシリンジシリーズを確認してください。
シリンジシリーズが分かったら、このガイド内の該当シリーズページを参照し、そのシリーズに対応する品番(パーツナンバー)を確認します。

マイクロシリンジ

ガスタイトシリンジ

STEP2:容量

シリンジのモデル番号はおおよその容量を示していますが、最も確実な方法は、バレルに印字された最大目盛(シルク印字)を確認して容量を読み取ることです。

STEP3:接続形状

シリンジの「接続形状」とは、シリンジ本体とニードルを接続する部分を指します。以下の図は、代表的な接続形状の例です。お手持ちのシリンジに該当する接続形状を確認し、指定欄に記入してください。

型 式
 
接続形状
備考
オート
クレープ
N

SN 
固定針
小容量シリンジ用
×
LTN
LTSN 
メルアーチップ
固定針
中容量シリンジ用
×
LT 
ルアーチップ
交換針
&Kel-F製のニードルおよび フィッティングに対応
TLL PTFE
ルアーロック
Kel-Fまたはメタルハブ製の ニードルおよびフィッティング に対応
RN RN交換針 デッドボリュームのない接続構造
Small Hubニードル(2.5 µL〜100 µL)、Large Hubニードル(250 µL〜10 mL)と組み合わせて使用
KH ナールドハブ
(ローレット   
加工付きハブ)
改良型マイクロリットルシリンジ用
SL サンプル
ロック
内蔵オン/オフバルブを搭載
Large Hubニードルと組み合わせて使用
×
FN CTC用
固定針
&CTC社製C-Lineおよび X-Typeシリンジに採用 ×
C ケムシール 1/4"-28 UNFねじ(ねじ込み式接続) ×

STEP4:針先形状

以下の図とお手持ちのシリンジのニードル先端形状を比較し、該当する針先形状を確認してください。

型 式
形状
説明
アプリケーション
ゲージ数
pst-2
10〜12°の斜めカット、 カーブ形状で試料をくり抜かないタイプの針先
ガスクロマトグラフでの セプタム貫通用
33 – 10
pst-3
鈍端で電解研磨仕上げ された針先
固定針
HPLCへの注入、TLC、一般的な液体ハンドリング、および動物への制御注射などに使用
34 - 10
pst-4
10〜12°の斜めカット、 針先。その他の角度もご要望に応じて対応可能
ライフサイエンス/動物注射用
&Kel-F製のニードルおよび フィッティングに対応
34 -10
pst-5 PTFE
試料のくり抜きを防ぐ ためのサイドポート付き 円錐形針先
ヘッドスペース分析など、ニードルの詰まりが起こりやすい用途に適している。セプタムへの損傷を最小限に抑える設計 26 -10
pst-AS 複数回の注入に耐えられるよう設計された、くり抜き防止型円錐形針先 オートサンプラーによる注入、 および事前に貫通済みのセプタム用 26-10

STEP5:針の長さ

ハミルトンシリンジの標準ニードル長は51 mmです。お使いのニードルの長さが51 mmでない場合は、特殊な固定針タイプまたは交換針タイプ(ニードル別売)のカスタム仕様である可能性があります。ニードルのゲージは、針の内径および外径を示します。
最適なゲージサイズは、シリンジ容量に基づいて多くのモデルであらかじめ選定されています。

3. 容量(吐出量)からシリンジを探す

どのシリンジが適しているかを判断するには、吐出量(ディスペンス量)に最も近い定格容量のモデルを選びます。一般的な選び方は以下の通りです。

ハミルトンシリンジタイプ・シリーズ対応表

シリンジタイプ
吐出量
シリンジシリーズ
マイクロシリンジ
(液体用) 
0.05 μL – 0.5 μL
7000シリーズ
0.5 μL – 5 μL
700シリーズ
800シリーズ
7000シリーズ
5 μL – 250 μL
700シリーズ
800シリーズ
250 μL – 500 μL 700シリーズ


シリンジタイプ
吐出量
シリンジシリーズ
ガスタイトシリンジ
(ガス / 液体用)
1 μL – 100 μL
1700シリーズ
1800シリーズ
100 μL – 250 μL
1000シリーズ
1700シリーズ
1800シリーズ
250 μL – 500 μL
1000シリーズ
1700シリーズ
500 μL – 50 mL 1000シリーズ
50 μL – 100 mL 1000シリーズ
スーパーシリンジ
100 μL – 2 L スーパーシリンジ

注意:最高の精度と再現性を得るために、シリンジの全容量の10%未満の量を 分注しないようにしてください。

4. 各種マイクロシリンジの概要

700 シリーズ

700シリーズは、ハミルトン社が最初に開発したオリジナルシリンジです。
製造・研究ラボにおける一般的な液体ハンドリングニーズに対応するよう設計され、現在も業界標準モデルとして広く使用されています。
ステンレス製プランジャーをガラスバレルに個別に精密調整して装着しており、摩擦の少ない滑らかな動作で高い気密性(液漏れ防止)を実現しています。
析出・結晶化、ガラスへの吸着が起こりにくい有機溶媒系サンプルに最適です。
なお、プランジャーとバレルはそれぞれ専用調整されているため、交換や組み替えはできません。

800 シリーズ(強化プランジャーシリンジ)

800シリーズは、700シリーズと同等の液体ハンドリング性能を備えながら、プランジャー損傷を防ぐアルミ製シリンジホルダーを追加したモデルです。
このホルダーはガラスバレルにねじ込み式で装着され、2ピース構造の延長プランジャーにより折損リスクをさらに低減しています。
また、バレル上部の摩擦調整ネジにより、吐出速度の制御やプランジャーの不意な引き抜き防止が可能です。
さらに、このシリンジホルダーには異なる容量のバレル/プランジャーアセンブリを組み合わせることができ、幅広い容量範囲に対応します。

7000シリーズ(改良型マイクロシリンジ)

7000シリーズは、5 µL未満の極微量分注用に設計されています。
非常に細いタングステン製プランジャーワイヤーが針先まで到達する構造となっており、デッドボリュームがゼロです。
この設計により、50 nL以下の高精度な分注が可能です。

5. 各種ガスタイトシリンジの概要

ガスタイトシリンジは、液体および気体の分注のどちらにも適したシリンジです。ポリマープランジャーチップを採用しており、漏れのないシールを形成します。従来はPTFE製チップが標準ですが、用途に応じて他の素材も使用されます。ポリマーチップは、シリンジバレル内面を拭き取るように動作し、サンプル残留を防止。これにより、塩類・タンパク質・DNAなどを含む溶液を扱う際でも、シリンジ寿命を延ばすことができます。

1000 シリーズ

1000シリーズは、液体および気体のあらゆるハンドリング用途に対応する中~大容量シリンジで、シリンジポンプや自動分注装置の標準モデルとして広く使用されています。全モデルに#6-32ねじ穴付きプランジャーを標準装備しており、シリンジポンプなどの装置への確実で安定した接続が可能です。

1700シリーズ

1700シリーズは、700シリーズシリンジのガスタイト仕様モデルです。研究および製造ラボにおける少量の液体・気体ハンドリングニーズに対応するよう設計されています。

シリンジポンプへの接続用として、#6-32ねじ穴付きプランジャーとプランジャーストップ機能を備えたラインアップも用意しています(写真は1710TLLX)。プランジャーストップ機能により、過剰な押し込みによるチップ損傷を防止し、シリンジの長寿命化を実現します。
※通常仕様のラインアップには、これらの機能は装備されていません。

1800 シリーズ(強化プランジャーシリンジ)

1800シリーズは、プランジャー損傷のリスクを排除するために設計されたモデルです。液体ハンドリング性能は1700シリーズと同等ですが、延長プランジャー構造により折損を防ぎ、さらに吐出速度のコントロールも可能にしています。

スーパーシリンジ

スーパーシリンジは、主に空気サンプリング、ガス標準の調製、リザーバーや呼吸記録装置(ニューモグラフ)の校正用途として設計されています。このシリーズは、ハミルトン社のシリンジの中で唯一アクリル製バレルを採用しており、そのため化学的耐性はやや低めです。